菊さんとにーにの華麗なる日常~庭いじり編
「しねばいいのに」
弟はそう言うと何でもないようにまた、庭いじりに戻っている。
ただ、呟いた瞬間だけ手も何もかもすべてを(息すらも!)やめて、物騒な言葉を紡ぐのだ。
掘り返した土の中から、昨年のチューリップがころり。球根を見て再び、「しねばいいのに」。
ざく、
スコップが土を割く。買ってきたばかりの苗を植えて再び、「しねばいいのに」。
ざく、
穴を掘っては「しねばいいのに」。球根がころり(まるで生首だなと思うも口には出さないなぜなら縁起が悪い)、「しねばいいのに」。呼吸を止めて、
「しんじゃえばいいのに」。
さすがに薄気味悪くなってきて、そろそろ止めるべきかと(いったい何を?)手を休め、菊、と我の弟の名を呼ぼうと口を開けば彼はくるりとこちらを振り向いて、ざく。スコップが地を貫き。拍子に飛び出た球根をひっつかんで笑顔でにっこり。
「ほら、兄さん。まるで生首」
縁起悪いことは言うなっちゅーとるやろがこの馬鹿弟が!
カイトの名曲「しねばいいのに」。うざいくらい爽やかな歌声だよ!