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カキチラシ

「サカサマ」ブログサイト内、書き散らしたもの置き場。

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02/03

Tue

2009



「鬼が笑った」




梅の花が、好きだ。

菊はそう言う。

梅はね、

と、菊。

梅の花は、いじらしいから好きなんです。私はここよ、と己の存在を主張する。
そのくせ、それは密やかに、黙って。気付かれないように、声を発する。

じ、とこちらを見つめる瞳は黒い。あ、星が。

いじらしい。

星が、散っているよ、菊。

だから、可愛い。

睫毛に雫が、落ちているよ、菊。

だから、いとおしい。

はらはら、と。
ほろほろ、と。

だから、私は梅の花が好きなんです。それにね、

菊は瞬きを一つ。
ほつり、と涙が。

梅は、飛ぶんです。さみしい。いとしいと。主人のもとへ、飛んできてくれる。本当にいじらしいったら、貴方。

伏せた眼差しを、そっとあげて。唇の端を、緩めてほほ笑みをひとつ。

大輪の薔薇には見劣りいたしますがね。

目を細めて、菊。私を見ないでくれないか。

「恥ずかしい、」
「何がです、ミスター」
「名を、呼んでは頂けませんか」
「カークランド卿、」
「名を、呼んでは頂けませんか!」
「イギリスさん、私はね。梅の花が、好きなんですよ。」

さらり、と前髪が指先で遊ばれる。間近で見る菊の手。

「生命線が、長い」
「毎年、蕎麦を食べていますから」

額の中心がチリ、と痛んだ。何だか、くすぐったい。

「恥ずかしいですか」
「君が、」
「ふむ、結構」

腕を組み、にやりと嘲笑。ああ、菊の花は。

「ひそやかに、浸透してゆく」

しんしんと、しんしんと。

「大地をおかしてゆく」
「確実に」

紡がれた言葉の力強さ。

「痺れるね、」
「大変、結構です。アーサー」

癖になる。

まるで、

「芥子の花、」

唇が、赤い。赤い、赤い、花。

「そう、兄さんに似合いの花。でも、貴方。」

菊の指が、額を突く。とん、と軽やかに。ずん、と胸に、響いた。

「あれは、頂けない。あれは、何とも不粋な代物。あれは、ひどく、許しがたい。」

黒い瞳が、私を貫く。

「許しがたい、ですよ。イギリスさん」

大事なことなので、二度、言いました。

ふわり。

綻ぶような、ほほ笑み一つ。

ああ。

「菊の花が、咲いた」
「高いですよ、菊花の香りは」

何ともこれは。

「癖になる」





20090203

菊アサと見せ掛けて、にーに総受

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