「脳」
僕は今すぐにでも気が狂ってしまいたいと思うけれど、哀れなるかな、僕自身の持つ生きるという力は凄まじく、僕はそうありたいといつも夢を見て、これ以上ない自堕落な生活を毎日、厭きもせずに繰り返しているだけだ。
そんな僕に体と脳は、反乱を起こす事無く安穏と日々を送るわけも無く、僕は常に体の悲鳴と脳の殺意にうなされる。
否、脳が心の虚無に犯されているのだろうか。
虚無を取り払わんと、僕は今日も糧を得る。
刃を握り、己を生かす為に糧を得る。
冷蔵庫を開けば、キャベツがぼんやり、ひとつきり。
間抜けさに笑った。
キャベツに刃を突き刺す度に、訪れる虚無の愚かしさに、仕方がないので僕は僕の脳を切り刻む妄想を抱くようにしている。僕は僕の脳を切り刻み、それを食べ、生と死との輪廻をぐるぐるぐるぐる回っている。
しかしこれは、まったくもってなんと心ない行いだろうか。
いっそ僕は、僕を食べてしまいたい。
なのに、僕は僕を切っている。
僕は僕を食べ、そしてまた、生きる糧と成し、どこまでもどこまでも地を這いずり回って生きていく。
でも、それには僕は僕を食べなければならない。
でもそれは、僕が居なくなるということ。
それでは駄目だ。
僕は僕の生きる力が凄まじく強いことを知っている。
こんな程度では、僕は駄目なんだ。
「野菜炒めが出来たよ、」
僕は皿に盛った、キャベツだけの食事に今日も満足している。
20090203