「水精(みなもり)君(仮)」
その0
体中が痒かった。そして、痛い。ごつごつとした背中の感触に、ぐ、と肩を起こしたがすぐに力尽き、そのまま倒れる。ああ、今、自分は道に野垂れ込んでいる。それだけが分った。次に閉じた瞼の下から、白く黄色い光を感じた。ああ、朝か。当然のようにそう思った。そして、次第にはっきりとしてくる感覚。暑い。じわりじわりと地面と接する皮膚の部分から、大気の熱を知った。ぴしゃ。不意に、音を拾う。ぴしゃ、り。耳が、音を聞く。びしゃ。水だ、そう、これは水だ。水のにおいがする。耳の次は鼻がにおいを知った。そういえば、咽喉が渇いたなとも思う。ああ、水が飲みたいな。出来れば冷たい、そう、朝一番の、冷たい水。きっと、それは美味しくて、美味しくて。ああ、水が、飲みたい。水が。
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