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カキチラシ

「サカサマ」ブログサイト内、書き散らしたもの置き場。

01/15

Wed

2025

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01/04

Sun

2009




「おもいひと」



 
 
背はぬくりとしている。
 
腹はひどく冷えたままなのに、
 
背はぬくりとしている。
 


 
背が重い。
 
ずっくりとした、厚みと思いに、
 
背が重い。
 


 
背に愛着がわいてくる。
 
どうしようもない、痛みとぬくもりとに交錯されるだろうに、
 
背に愛着がわいてくる。
 
首筋を風が触れた。
 
刹那、閃光が背筋に走る。
 
首筋をなぞる指先は、
 
同時に心の臓までをもまさぐっている。
 
痛みにあえぐ。
 
ぬくもりに笑む。
 
風はするりと離れていき、
 
また、
 
背はぬくもりを甘受する。
 
風が、笑った。
 
 
20090103

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11/14

Fri

2008

咽喉に餅をつまらせて死ねばいい。

「白い夢」
 
 夢を見ている。
 コンクリートの道路、見上げる団栗の木、重なり合う葉っぱ。その間から見え隠れする、まん丸お月様。
 ああ、夢を見ている。これは、夢だ。なぜなら月はもはや、この世に存在しない。
 愚かなる月ウサギのふざけた餅つき大会の末、あの美しく可憐で儚い月は、見事に割れてしまった。故に、僕らはまん丸お月様を心の中から奪われて、今では見上げれば真っ暗闇に赤く燃える半円と、申し訳程度に残った瓦礫の金色が、きらきらと華やかに散っている。それから幾日もたたないうちに、心を奪われてしまった僕らは一人、また一人と顔がなくなってしまった。一人、また一人。
「今日もなくなったやつがいたらしいぜ」
「明日もなくした人がいるらしいわ」
「明後日も散ってしまったらしいよ」
「明々後日も」
「その次も」
「その次も、」
「その先も・・・・!!!」
 気がつけば僕だけがなくならない顔を持ち、こうして半分と欠片になってしまったお月様を監視している。
 僕らは監視者であるというのに、その対象をうばわれてしまった。
 なくしたものは、もう僕らの手には戻らない。
 残らない思いを心からも消失させた、憎き月ウサギたちを僕は如何してやったらよいのだろうか。この頃、そんなことばかり考える。
 仕方ないので、とりあえず、丸い皿でも飾っておこう。
 
20081114
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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11/14

Fri

2008

「ある御婦人への讃歌」
 
 
見えぬ泪は滑り落ち、
じわりじわりと、
同化する。
ゆる、ゆると。
消えた痛みは何処へ往く。
じゅわ、じゅわと。
仰ぐ瞼は、既に乾き。
見える空は、
しら、じらと。
忘れる恐怖に懐古の情。
暗い乳白色に包まれた、
真白い微笑は凛として。
 
 
手の甲に、青き地脈。
流れ星と、貴女の声。
翳んだ色で見る景色。
 
 
清清しく重きこと。
往々にして美しきこと。
あたたかい掌のこと。
 
 
 
 
200806某日

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08/30

Sat

2008

残暑お見舞い申し上げます

 
 
「出産の過程を追っては喜び完成しては壊す楽しみつまりはそれが創作活動」
 
 
 






 
 
 本の中に、生きている。いいや、それでは語弊があるな。そうだ、そう!
「僕等は物語の中を、生きている。」
 不思議な不思議な僕らの世界。
 世界はいつでも僕らの味方で、僕らの家族で、僕らの体、僕らの心。
 世界は僕らのものであって、僕らの僕らによる僕らの為の巣箱(アジト)。
 最高だ。最高だ。
「そう、思わないか導師よ」
「そう、思いたいか同志よ」
「いけませんかね、」
「いいや、大変結構。」
「では、」
 この、素晴らしい世界に乾杯。
 
 
 
かち、ん。
 
 
 
 硝子の瞬く光に、はっと目が覚めた。
 夢を見ていた。
「まただ。」
 酷く寝汗をかいていた。拳は左胸の上。どくりどくりと脈立つ音は、毎日毎日、己へと重い楔を打ち込んでくる。疲労をとる事も叶わぬ睡眠は、近付く朝への彼岸の序曲だ。ごくりと飲み込む生唾は、苦味以外の何物でも無い。いつから、こうなったかは知らぬ。だが、確実に体力も精神力もすり減らされている己は、誰かに突付かれようものならいとも簡単に、奈落の底へと落ちるのだろうか。否、落ちるだろう。伸ばす腕すら持ち上げる事無く、ただ、黙って。静かに。それはそれは自然な落下は、音も無く世界を切り裂くだろう。そこにあったものが目を離した隙に無くなる、それ程の余裕すら与えられずに、さっさと、私はこの世界からこの身を消し去れるのだ。
「忘れられるのは辛く悲しい。」
 寂しさに襲われた胸は、少しばかり鼓動を鎮め、代わりに締め付けるような悲壮感に囚われた。
「どちらも、遠慮したいもの。」
 こんな気持ちになるのなら、いっそこの胸を貫いてみれば良いものを!
「生殺しとはこの事だ」
 ふふ、と小さな嘲りは、はたして誰に向けられたものなのか。
「知る人ぞ、今は無き。」
 ぐ、と夜着の胸元を握り込む。皺になる、と眉根を上げて嫌な顔一つ。瞼に映るはそんな、楽しくも無い顔をした世話役か。
「それは悪夢だ」
 ふふ、と今度は苦笑を零す。幾分か、息が楽になった気がした。そうだ、いいぞ。この調子だ。
「お前はいつも、そうだ。」
 不機嫌そうな、仏頂面。たまには笑顔の一つでも見せたらどうだと言いたくもなる。言えば言ったで、笑顔を見せる理由もありません、などと可愛げのない返事。笑顔を見せる事など、何の罰かと言わんばかりに歪む、世話役の顔。ああ、面白くもない楽しくも無い顔だ。ひ、と短く息を吸い込む。胸の痛みが届かぬ浅い場所で、軽く何度か呼吸をした。新しい世界のカケラが、体の一部に浸透する。匂いが、胸を和らげた。鮮やかな味が、食道を押し開く。その底に、口を開き待ち構える底なし沼。ずぶり、ずぶりと沈む足は、もはや踝までもが埋まってしまった。足の指先を少しでも動かすたびに、ずぶり、ずぶり。世界が沈む。視界は暗転。空は、どこだ。冷たくも熱くも無い泥土は、もはや泥土の感触すらも、与えはしない。ただ、沈むだけ。ただ、そこへとずぶずぶ。
「沈むだけ」
 脹脛、ああ、膝小僧。膝のお皿がのせ切れぬ食材に、ぱりんと割れる。がくりと関節が歪み、崩れた体勢を整えようと、無意識に腕が前へと伸びる。ずぶり。いっそう、体は泥の中へと沈み、太ももはその姿を世界から消してしまった。股、腰骨、骨盤がそこで初めて寒さに震えた。背骨がきしゃ、と音の無い悲鳴をあげた。だが、己にもどうする事も出来ぬのだ。待つ事すら叶わぬ恐怖、ただ現状を流し見るだけの屈辱、それすらも放棄し始める無気力な頭。臍は雷にとられ、右腕は捨て駒に。これだけはと左胸に爪をつき立て、心臓を抉りとる。ああ、助かったと頭上高くそれを掲げ、どくりどくりと息をつく心に、安堵をもらす。そうして肩までとられ、残すは首と頭の二つだけ。否、高く掲げる左腕と、心臓はすでに己が意識を切り離し、それは自身の物ではない。かつて、自身につながれていた自身を表す宝物。何処の者へと捧げる供物に摩り替えて、これだけはとなんと諦めの悪い事。
「これだけは、」
 これだけは、これだけは。これさえあれば、分かってくれる。必要ならば腕をやっても良い。首を捧げてやろう。頭もくれてやる。だがこれだけは。
「お前が繋いだ左腕、そうしてお前が取り上げたこの心臓。」
 それさえあれば、お前は私を私と分かってくれる。
「その、確証が、ある限り。」
 この心臓に、その証が刻まれている限り。生まれた時より知っていた。物心ついた時より知っていた。その温もりと、その眼差し。
「私は全てをなくしても、決して、消えはしないのだ。」
 ずぶり、ずぶ。
 と、ぷん。
 泥の沼。波紋を広げ、沈んでゆく。
「ずぶり、ずぶり、」
 
 
 
 
 
 
「新たな住人に、乾杯」
 
 
 
かち、ん。
 
 
 
 グラスのかち合う音に、はっとした。目が覚めたと認知したのはその刹那。冷や汗が額といわず体中に這いつくばっている。此処はどこだ、瞬時、辺りを見渡した。
「おはようございます、先生。」
 不機嫌な、仏頂面は見ているこちらまで機嫌が悪くなってくる。
「ああ、おはよう。水をくれ。体が乾いている」
 苛立った声でそう言えば、相手はじっとこちらを見つめ、動かない。
「どうした、」
「どうしたって、先生、貴方。」
「何だ。」
「乾くはずも無いでしょうに。」
「何だと、」
 全身、ずぶ濡れの癖に、一体、どこを泳いできたんです?
 ぽたり、ぽたり。
 前髪から滴り落ちる水の音。頭の先から足の裏まで、湿った感触に驚いた。一体、何事だ。
「まったく、どこを彷徨ってきたんですか。夢遊病も大概にしてください。」
「夢遊病なものか!!」
 勢いよく、布団から転がり出た。畳に足をつけ、前を見据える。じたり、全身が重かった。水の匂いに鼻腔がむずがる。水なのか。一体、何の匂いというのだ、これは。どこかでかいだ事のある、懐かしいような、それでいて二度と戻りたくは無い場所の匂い。あんな狭く息苦しいところ、絶対に嫌だ。分かりもしない癖に、どうしてかそう思う。
「何度同じ事を繰り返せばお気が済むんですか、先生。馬鹿な事はもうやめて、さっさと原稿を仕上げて下さい。もう何日ですか。さすがの私も、庇いきれませんよ。」
 ほら。目の前に差し出された真白い原稿用紙と万年筆に、くたりと腰が落ちる。その二つを見た途端、己の中にある何かが猛烈な勢いで破裂しそうな気がした。堪えられない。
「やれば、出来るじゃないですか。」
 畳に這いつくばるように、何もない紙の上を文字という世界で埋め尽くしていく。激流に呑まれた木の葉のように、なす術も無くひたすら、手を動かした。時折、ペンを握る指が間に合わず、頭の中の文字と紙上の文字とが行き違いを起こす。その度、かっとなる頭をぽん、と撫でる掌に、僅かながらも冷静さを取り戻す。しかしそれも、湧き上がる激情にはすぐに効果を喪失する。止まれば終わりだ。もう、この思いは二度と湧き上がってはこない。遠ざかりそうになるそれを、必死で捕まえ、精一杯の力で紡ぎ出す。待ってくれ、待つまいか。一方的な追いかけっこは、いつまで続く。
「全てを吐き出した後に、沸き起こる溜息が、満足というものなんだ」
「左様でございますか。」
 ぽん。
 撫ぜられる頭、再び、加熱する思い。
 思念が錯綜する己の脳裏は、沸点を振り切り、飽和状態へと移行する。これは不味い。これは不味いぞ。泡を押しつぶし、ぱちんと音が鳴りきる前に、書き終える。
「文字の中に、生きるものがある。」
「文字の中に。」
「文字と文字の合間に、存在する力がある」
「白紙の沼ですか」
「水溜りさ」
「薄汚れた、」
「そう、少しだけ。書き損じもあれば、手垢もある。真っ白の空間もあれば、何も無い。」
「左様でございますか。」
「そう、世界がそこにある。そこに息づくものがある。」
 ぽん。
「その源泉は、お前の手の下さ。」
「左様でございますか。」
 ぽん。
 
 
 
かち、り。
 
 
 
 壁掛け時計が、時を刻む。針を動かす原動力は、小さな歯車に、小さな螺子だ。螺子穴を覗けば、そこには幾多に広がり入り組む世界がある。歯車に乗り、また別の歯車へと飛び移り、時計盤の裏を駆け抜け、時々、鳩の棲家から顔を出す。覗いた世界はまた、何処かへと続く扉を掲げ、ドアノブに手を伸ばす前に鳩はそっと、頭を引っ込める。引きずり込まれた時計の家は、一瞬、暗闇となるけれど、耳を澄まさずとも矢継ぎ早に唸るカラクリに、次はいつ、頭を出そうかとしばしの思案にふける。
 
 
 
かち、ん。
 
 
 
 目玉が、ぎょろりと動く。差し込む光にペンが落ちた。インクの染みが、ピリオドを打つ。
「世界が終わった。」
 呟き、ごろりと体を伏した。空っぽになった空洞の、奥底から吹きぬける空気は溜息となる。畳の目に吹きつけた呼気は、冷たくも熱くも無い。それはまるで、あの泥の沼の如く、体をずぶずぶと畳の中へと引きずり込んだ。
 いつの間にか乾ききった全身は、覆われた夜着にすっぽり身を任せている。
 安堵。
 平安は今まさに、訪れんとしていた。
 行き着く先は、まさにここ。
 ぽん。
 撫でられた頭。その掌の、新鮮で、何と暖かい事。思わず、その正体にぞっとした。
「おい、何を持っている」
「何って貴方、」
「どうするつもりだ、それをかえせ!」
「嫌ですよ。だって、差し出したのは貴方でしょう、ね、先生。」
 どくり、どくり。
 高らかに、脈打つそれは、全ての始まり。
「さあ、続きをどうぞ。」
 この、生まれたばかりの素晴らしき世界に心の臓の杯で持って祝おうではないか。
乾杯。
 


 
 
 
 2008年8月サカサマ

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07/20

Sun

2008

 

 
 溢れ出て、迸る魂。ああ、ああ。止められない、止められない。しかし、駄目だ。まだ駄目だ。いけない。たとえこれ以上ないだろう明るい高まりは、その無邪気さゆえに、悲劇を伴う。外へ、前へ、出したいと願っても、それはごちゃごちゃとした気体であって、固体ではない。形としては、世に為す余裕はまだないのだ。それでも、出たい出したいと喘ぐ喜びは、いわば形骸にすぎない存在を、作り出そうとしている。それは私の意思に反する行いだ。形無き存在を、認めてはならぬ。決して、今は。


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